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自らを閉ざす者(箴言18章)

更新日:6月26日


「自らを閉ざす者נִפְרָדは、自分の欲望のままに求め、


すべての知性と仲たがいする。」(箴言18:1)



「自分の欲望」という言葉から、


「自己中心的な欲望」を思い浮かべると思うけど、


原文には「自分の」や「~ままに」に対応する独立した語は置かれていない。

「自分の欲望のままに」という訳には、文脈を踏まえた解釈が含まれている。


לְתַאֲוָה יְבַקֵּשׁ נִפְרָד

レタアヴァー イェヴァッケーシュ ニフラード

※ヘブル語は右から左へ読む


※新改訳2017は、נִפְרָד(ニフラード)を「自らを閉ざす者」と訳しているが、

もともとは「離れている者」「分離した者」「孤立した者」という意味領域を持つ語である。


箴言18章1節のヘブル語分析表。「נִפְרָד(離れている者)」「יְבַקֵּשׁ(求める)」「לְתַאֲוָה(願望へ)」の三語について、読み方、品詞、逐語的な意味を一覧で示した表。
箴言18章1節の原文



原文では、

「離れている者(נִפְרָד)」「求める(יְבַקֶּשׁ)」「願望へ(לְתַאֲוָה)」という

三つの語が置かれている。



節の冒頭ではまず「離れている者」が提示されている。


読者は「何に対して離れているのか」という問いへ導かれるかもしれない。



後半はどうなってるのか?


בְּכָל־תּוּשִׁיָּה יִתְגַּלָּע

ベホル・トゥーシーヤー イトガッラー

※ヘブル語は右から左へ読む


箴言18章1節のヘブル語分析表。「נִפְרָד(離れている者)」「יְבַקֵּשׁ(求める)」「לְתַאֲוָה(願望へ)」の三語について、読み方、品詞、逐語的な意味を一覧で示した表。
箴言18章1節の原文

 תּוּשִׁיָּה

(トゥーシーヤー)・女性名詞

   健全な知恵 確かな知性 実効性のある知恵 分別 揺るがない判断力 

箴言では

 「主は正しい人のために健全な知恵תּוּשִׁיָּה)を蓄えられる」(箴言2:7)

 「健全な知恵תּוּשִׁיָּה)と思慮を守れ。」(箴言3:21)


 知恵自身が語る。 

 「私には助言と健全な知恵תּוּשִׁיָּה)がある。」(箴言8:14)


   ※箴言におけるתּוּשִׁיָּהは、

   単なる知識ではなく、人を生かす健全で実践的な知恵として描かれている。



יִתְגַּלָּע

(イトガッラー)・ヒトパエル未完了3人称男性単数

   ここが一番おもしろい。

 語根גלע

  旧約でほとんど出てこない、非常に稀な語根。

  ヒトパエルはしばしば、

   自分をその状態に置く 自分からその行為に入り込む 相互的・反複的行為

  を表わすので、

  ・激しく反発する 言い争う 衝突する 仲たがいする 自らをぶつける

  という意味で理解される。


逐語的にすると、

  「あらゆる健全な知恵に対して、彼は激しく反発する。」になる。



ここまでを繋ぐと、


離れている者(נִפְרָד

願望を追い求める

健全な知恵(תּוּשִׁיָּה)に対して

ヒトパエルのニュアンスを踏まえるなら、

自らその反発へ身を投じていく姿(יִתְגַּלָּע


が立ち上がる。



そのため、「自らを閉ざす者」という新改訳2017の訳語は、


一人の孤独な人で終わらず、


健全な知性や分別に対して、自ら反発し、自ら孤立へ向かっていく人、


願望へと向かいながら健全な知恵には自ら反発していく人、


という人物像が浮かび上がってくる。



箴言18章1節は、


「欲望が悪い」


という単純な倫理ではない。


何かから離れてしまった人が、


自分の願望を追い求めるあまり、


健全な知恵そのものへ反発していく。



そんな孤立に向かう姿を静かに映し出す、


かなり切ない人の姿が見えてくる。


ご覧になっておられる方の


切なさとして。



今、何かから


離れていないだろうか。



木の床の室内で、しょんぼりした犬が倒れたじょうろと土のそばに座り、白い花の鉢が立っている、暗く静かな場面
「今、何から離れているだろうか。」


  

 

 
 
 

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